三井環法律事務所
私の見た裏金問題
裏金のつくりかた
調査活動費の実態を知ったのは、私が高知地方検察庁のときでした。次席検事、ようするにナンバー2に私が出世しました。私の生まれは愛媛県です。地元に近い高知での次席とあって故郷に錦を飾るというところもあって、張り切っていました。
着任して1週間ほどしたときでした。事務部門の責任者、事務局長、会社なら総務部長にあたる人物が、なんとなく人目をはばかる感じで
「次席、ちょっと」と何やらノートを片手にやってきました。
それが、なんと裏帳簿でした。そこには、調査活動費が遊興費に使われている内容がびっしり記載されているのです。
もう一冊、もって来たのが表帳簿。そちらはもっともらしく、監査があっても説明がつくように記載されていました。
「Aさんから、右翼団体の情報提供」
「Bさんより、地元政界についての意見交換と地元での検察の役割」
それまで、何となく裏金というのが存在するのではないかと、うすうす感づいていました。
検事正が毎晩、高級クラブで飲んでカラオケを歌い、日曜日には高級ゴルフコースで、遊んでいる。
「なんでやねん」
と平の検事の時は、ずっとそう思っていました。
この帳簿を見て、説明を受けた瞬間、その謎は解けたのでした。
実際に目の当たりにするとびっくりです。
「本当かいな」
という動揺しつつも、せっかく次席に出世した、ナンバー2ですから、鷹揚に格好をつけながら、
「そうか」
と余裕の表情でそのときは、事務局長に求められるままに、サイン、捺印しました。
ナンバー2になると調査活動費の決裁をしなければならないのです。私は決裁しましたが、裏金が飲み代に使えるのは私の唯一の上司である、検事正だけです。たまに、検事正の機嫌がいいときか、東京などから検察や法務省関係のお偉い方々がこられる時に、お相伴にあずかる程度です。
私が次席を経験した、高知地検や高松地検は調査活動費が年間約400万円分の予算が計上されていました。
そこから、必要に応じて支出するのです。
まず支出伺い書を作成。架空の調査項目「右翼団体の調査」「日共集会」などという名目をでっちあげて、情報提供者に3万円か5万円を支払ったことにする。
その現金はすぐに事務局長の手元に届き、所定の口座に入金されたり、金庫で現金のまま保管され、裏金となります。領収書は公安事務課が、架空に作成します。もっともらしい名前や住所がありますが、実在する人物は、いません。高知地検のナンバー2だった時は、調査活動費が年間400万円ですから、1件5万円なら、80枚の架空領収書があった計算です。
事務官は苦労したと思いますよ。筆跡や印鑑など、すべて違った形にせねばならない。
領収書にコーヒーのシミをつけた、スナックの領収書ならウイスキー、すし屋ならしょうゆにわさびの香りだと、演技派もいました。捜査でこれくらい情熱を傾けて、頑張ってくれたら、もっとすごい大きな事件をやれたと思うと、悔やみきれないです。(笑)
まさか、裏金の決裁までしなければならないとは、驚きでした。